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2025年9月15日

植生学会三十周年記念 関西シンポジウム 2025年11月30日(日)開催

企画:植生学会三十周年記念 【公開シンポジウム】
「シカは日本の植生をどう変えたのか-保全への視座と実効性について」

 

 日時:2025年11月30日(日)13:30~17:00
 場所:奈良女子大学 講義棟E108
  ※正門を直進,テニスコート前の講義室(会場130名,オンライン200名:ハイブリッド開催)
 
対面およびオンライン申込先: https://forms.gle/WGYyF2MbQHfN1kK39
後日事務局よりWeb配信用の情報がメールにて送付されます。

 

チラシ掲載:https://shokusei.jp/baser/news/archives/49

 

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【シンポジウム趣旨説明】 前迫ゆり(植生学会会長)
 シカの個体数増大による影響は農林業被害にとどまらず、自然環境の大きな脅威となっている。シカの植生への影響について2009年と2019年に植生学会でアンケート調査を行った結果,影響が「ある」とする回答は10年間で47.4%から60.8%に増加していた(前迫ほか,2020)。全国的なシカの増加と分布拡大によって、森林や草原の生物多様性の劣化が進行し、土壌侵食による災害も発生している。本シンポジウムでは白神山地,芦生研究林,宮城県金華山,大台ヶ原,春日山原始林,大阪の里山,屋久島などで長年調査をしている研究者にシカによる植物および植物群集への影響についてご講演いただく。多様な植生の挙動を共有し,植生および生態系保全への視座とその実効性について議論したい。 

 

【講演者】
・中静 透(森林総合研究所):「樹木とシカとササの三者関係」
 樹木の更新はササ類の優占によって阻害される。したがって、ササが一斉枯死したり、人為的に除去されたりすると、樹木の更新が進む場合がある。シカは、樹木の樹皮を剥いだり、樹木の実生や稚樹を食害したりするが、ササ類も食べる。この3者が絡むと、森林の運命を大きく変える場合がある。講演では、約40年間の観察結果をもとに、この3者関係を解き明かす。

 

・阪口翔太(京大):「大規模シカ柵による植生回復と希少植物の遺伝的保全」
シカの食害による森林植生の劣化が問題となり,多くの希少植物が地域絶滅の危機に瀕している。本発表では,京都大学芦生研究林における大規模シカ柵を活用した集水域スケールでの植生回復試験を紹介する。さらに,大学・植物園・市民研究者との連携による域外保全の取り組みや,遺伝的多様性に基づく希少種の保全事例を報告し,今後の植生管理に向けた新たな視点を提示する。

 

・幸田良介(大阪府立環境農林水産総合研究所):「西日本でのシカによる植生への影響:大阪と屋久島でのモニタリングから」
西日本においても各地でシカによる森林植生への影響が生じている。一方で影響の生じやすさやインパクトの大きさは、植生タイプやニホンジカの亜種に応じて一様ではないようである。発表では大阪府の落葉広葉樹林と鹿児島県屋久島の照葉樹林での長期的なモニタリングデータを用いて、植生への影響の共通点や相違点について紹介するとともに、今後対策を進めていく上での課題について議論したい。

 

・高槻成紀(麻布大学):「シカに一体何が起きたのか?-この半世紀を振り返る-」
私がシカの研究を始めた1970年代はシカの生息地は限られ、私は九州や四国のシカのすむ島を探して調査をした。多くの県でシカは保護獣だった。ところが1980年代から回復、拡大の傾向が始まり、1990年代には分布が全国的になると同時に過剰問題になってきた。その背景は農山村の過疎化にあることを説明したい。現在では土砂崩れも起き、安全面での問題も深刻になっている。国はシカ問題に真剣に取り組むべきだし、マスメディアの協力も期待したい。

 

パネルディスカッション コーディネーター 前迫ゆり
閉会の挨拶 奈良女子大学共生科学センター長 酒井 敦
進行:石田弘明(兵庫県立人と自然の博物館)

 

主催:植生学会
後援:奈良女子大学共生科学センター,関西自然保護機構,紀伊半島研究会

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